腎移植について

腎臓移植を考えるようになったので、少し勉強しました。
ネットの資料から重要な部分を抜粋してみました。

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末期の賢不全の治療法には、血液透析、CAPD(腹膜透析)および腎臓移植の3つがあります。
腎臓移植は、病気で働きを失った腎臓を、提供された健康な腎臓と取り替える治療法で、今のところ末期の腎臓病(腎不全)の唯一の根本的治療法といえるものです。
腎臓移植をすると、透析治療から解放されますし、食事の制限も緩和され、気分もすっきりして、全身状態が大きく改善します。
女性では妊娠・出産も可能になり、お子さんではほぼ正常に近い発育が期待できます。
提供された腎臓を長持ちさせるためには、生涯にわたる免疫抑制薬の服用が必要です。
しかし腎臓移植にも後に述べるような問題があり、どの治療法を選ぶかは、その人の身体状態や生活状況を総合的に考慮した上で決めます。
どの治療法を選ぶにしても自分で自分の健康に気をつける<自己管理>が最も大切になります。

透析と腎移植のメリットとデメリット

■腎機能の代償程度
透析(部分的で10%)腎移植(かなり正常に近い)
■生活の制約
透析(多い)腎移植(ほとんどない)
■社会復帰率
透析(制約される)腎移植(高い)
■食事・水分制限
透析(強い)腎移植(少ない)
■免疫抑制剤
透析(不要)腎移植(不可欠)
■出産
透析(きわめて厳しい)腎移植(可能)
■最大の問題点
透析(長期透析合併症)腎移植(ドナーが必要)
■その他の問題
透析(シャント維持)腎移植(拒絶反応の危険、重篤な感染の危険)

日本での腎臓移植数。

日本での一年間の腎移植数は約700件。
わが国では1年間に約3万人の新規透析療法導入者があることを考えると、1年間の腎移植数が700件程度しかないのは諸外国には例のない異常な少なさです。

なぜ日本では腎移植が少ないのか。

日本の腎移植は、成績に関しては移植先進国である欧米と比較しても遜色ないくらいに良好です。
心停止後の提供による献腎移植も、腎移植後に血液透析療法を短期間必要とすることが普通であることを考えると、良好といえます。
日本で腎移植が増加しない最大の原因は、腎提供が少ないためです。
脳死臓器移植法成立後、臓器提供に関わることから生まれる騒動に巻き込まれること、マスメディアの加熱報道、腎移植における心臓死での臓器提供と脳死下臓器提供についての勘違いなど、腎移植が増加するのではなく逆に減少したのは残念なことです。

生体腎移植と献腎移植のメリットとデメリット

生体腎移植のメリットは、移植の日程をあらかじめ決めることができる点です。
このために、受腎者(レシピエント)自身も移植前に全身状態のチェックを綿密に行うことができ、最善の状態で移植手術に望むことができます。
また血液型不適合の移植などは、移植前に一定の期間をかけて治療を行うことによって、生体腎移植でのみ移植が可能になります。
したがって組織適合性の面からも、献腎移植に比べて生体腎移植のほうが適応範囲は広いといえるでしょう。
さらに、移植時の腎臓の状態が良好であるために、移植直後から尿が出るのが一般的です。
ただし、生体腎移植においては健康な人が提供者となるため、臓器提供手術が安全に施行され、臓器提供後も健康な状態を維持できることが必須であり、提供者に対する詳細な術前検査が必要となります。
また、提供者の方も手術後は生涯にわたり定期的にフォローアップを続ける配慮が必要です。
これに対して献腎移植は、健康な人を傷つけないという点で、より自然な臓器移植の形であることが最大のメリットです。
また現状では、献腎移植の選択基準は HLA適合度が最優先されているため、組織適合性が良好であることが多く、免疫抑制療法の進歩により移植後早期の拒絶反応による機能廃絶の危険性もほとんどないといえるでしょう。
ただし、提供者数がきわめて少ないのが現状であり、なかなか献腎移植の機会に恵まれないことが、最大の問題点といえます。また生体腎移植とは異なり、移植直後から尿が出始めることは少なく、移植後もしばらくのあいだ透析療法を続ける必要性が高くなります。

移植された腎臓はどのくらいもつか

HLAの適合した兄弟23.6年、両親12.1年、非血縁(献腎移植)8.6年(HLA0ミスマッチ13.9年、HLA6ミスマッチ7.9年)とされています。
しかしながら、免疫抑制療法の進歩により生着期間の差はHLA適合性などの免疫学的因子とは関係が薄くなってきています。
個々の例における移植直後からの移植腎機能の差(これは提供者の年齢や腎臓の大きさなどある程度避けられない要因にもとづく)や、高血圧や高脂血症などの合併症など移植腎そのものとは関係ない問題点をいかにコントロールするかといったことのほうが重要になってきています。

血縁(親兄弟)でも非血縁(夫婦間)でも腎臓は変わらずに正着するか

以前は、HLA適合性が不良である可能性が高い夫婦間の生体腎移植では、急性拒絶反応のリスクが高くなり生着率が低くなると考えられました。
しかし、最近では免疫抑制剤と免疫抑制療法の進歩により、HLA適合性が不良であっても、高い生着率が得られるようになりました。
したがって、HLA適合性のよくない夫婦間であっても、提供者が高齢である近親間の生体腎移植と比較した場合、むしろ高い生着率が期待できるでしょう。

移植じた腎臓がだめになることがあるか。

移植後腎機能を失う比率は、年を経るごとに大きくなります。
すべての方が、移植早期の急性拒絶反応を乗り切っても、その腎臓がずっとはたらき続けるわけではないのです。
しかし、なかには30年以上移植腎がはたらき続けている方もいらっしゃいます。30年前の免疫抑制剤に比して現在の免疫抑制剤は、格段の進歩がみられます。
長期間、移植腎機能がはたらくことが期待されます。

血縁でなくても腎臓を提供できるのか。

現在は免疫抑制剤がよくなっているので、非血縁の家族ドナー(夫婦間など)でもHLAのマッチングにかかわらず成績は良好です。
たとえば、非血縁夫婦間腎移植は親子間腎移植と較べても遜色のない移植腎生着率が得られています(平均移植腎生着数は14.5年)。
ただし倫理的な観点から、原則として親族(6親等以内の血族と3親等以内の姻族)以外の非血縁者間での生体腎移植は行われません。
親族以外の第三者がドナーとなる場合は、提供意思が強制でないこと、金銭の授受などが行われないことなどを厳正に審査するよう、日本移植学会の倫理指針によって定められています。

高齢や幼少でも腎臓を提供できるか

日本移植学会は倫理指針の改訂を行い、これまで「未成年者は対象としない」としていましたが、未成年者も16歳以上については対象に含めました。
しかし、本人の自発的な意思であり、強制されたものではないことが十分に担保されなければならないことは言うまでもありません。
一方、年齢の上限は定められていません。しかし、元気な合併症のない高齢者(70歳以上)でも、加齢による腎機能の低下は認められ、高齢者からの提供移植腎の長期生着は不良であることが報告されています。
70歳以上の腎提供は、本人、レシピエントの両者ともに避けた方がよいと考えています。

血液型が違っても、腎臓を提供できるか。

できます。「A→O、B→O、AB→O、AB→A、AB→B、A→B、B→A」の場合、「血液型不適合」といいます。
血液型不適合の場合、ドナー腎の血管にドナー血液型抗原が存在していて、これをレシピエント血中に存在する抗血液型抗体が攻撃し、急性拒絶反応を起こしてしまいます。
そのためレシピエント側で、まず脾蔵摘出とDFPP(二重濾過血漿分離交換)を行い、抗血液型抗体を低下させた後に移植します。
レシピエントは移植直後に通常より強力な免疫抑制剤を必要としますが、免疫抑制剤がよくなった現在では、平均生着年数は親子間の12.3年とほとんど変わりません。
O→B、O→A、O→AB、A→AB、 B→ABは「血液型不一致」といいますが、レシピエントに軽い貧血がくる以外は、DFPPも必要とせず、免疫抑制剤も通常で可能です。

腎臓提供をして腎臓が一つになるとどんな合併症が起こるか。

基本的には何も起こりませんが、脱水になると腎機能が悪化しやすいため、風邪をひいたときや暑くて汗をたくさんかいたときなどは、十分に水分を取るなどの対策を講じることが必要です。
また尿路感染に対しても腎機能が悪化しやすいため、症状があれば早めの外来受診が望まれます。長期的には、いわゆる生活習慣病の管理をきちんとすることが重要です。
肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症は腎機能に影響を及ぼします。片腎で機能が悪化すれば慢性腎不全から透析に移行する可能性もあるため、食事、運動に気をつけて生活習慣病にならないよう心がけることが大事です。

生体腎移植の腎臓提供者はどのような手術を受けるのか

腎臓は左右1個ずつ、計2個存在します。そのうちの1個(通常は左側)を摘出し、レシピエントに提供する手術です。
最近は、内視鏡的に腎臓を摘出する方法が一般的になりつつあります。

■鏡視下腎臓摘出術

最近、欧米で広く行われるようになった術式です。
日本国内で施行しているのはまだ一部の施設のみですが、今後はこの手術が主流になっていくと考えられています。
摘出創が小さいため術後の疼痛がより少なく、早期の離床が期待できます。
腹腔内を通り腸を避けて摘出する「腹腔鏡下腎臓摘出術」と、直接後腹膜腔にいたって腎臓を摘出する「後腹膜鏡下腎臓摘出術」があります。
われわれが、普段施行している後腹膜鏡下腎臓摘出術について説明します。
側腹部3カ所に約 2cmの切開を加えます。皮膚の下の筋膜と筋肉を同じように切開し、後腹膜の脂肪組織に包まれた腎臓を、内視鏡で観察しながら、細い鉗子を用いて周囲からていねいに剥離し、十分な長さの腎動脈、腎静脈、そして尿管をつけて取り出します。
取り出す際には、術後の出血がないようにステープルのような器械で動脈と静脈を厳重に遮断し切断します。周囲組織、血管、尿管を切り離した後、腎臓を、下腹部の横切開創(6cmほど)から、体外に取り出します。
傷跡は将来下着で隠すことができ、目立ちません。しかし、術中に出血などで内視鏡での摘出が困難な場合は、すみやかに従来の摘出術に変更することがあります。
手術の所要時間は、3~5時間程度です。また、本術式では、術後の疼痛が軽度なため麻酔は全身麻酔のみで、硬膜外麻酔は行いません。手術日翌日から歩くことができ、術後5日ほどで退院できます。手術後の傷痕は、ほとんど目立ちません。

腎臓提供後の痛みはひどいのか

痛みの感じ方は人によりさまざまなため、一概にはいえませんが、ほとんどの方は、内視鏡的に腎臓を摘出した場合、手術翌日から痛み止めが不要になることが多いです。
腹部斜切開による腹膜外腎摘出術の場合、硬膜外麻酔を手術後4日間使用しますので、その間痛みは比較的軽度です。

腎臓提供者は何日くらい入院するのか。

内視鏡的に腎臓を摘出できれば、術後4~5日の入院で十分であると考えられます。
ただし、レシピエントの方の近くにいたいという患者さんには、8日間ほど入院していただくこともあります。
腹部斜切開による腹膜外腎摘出術の場合、入院期間は手術後12日間程度です。

腎臓提供者の残された腎臓が機能しなくなることはあるのか。

ごくまれに起こります。600人以上の方の生体腎移植を経験したある施設では、そのなかで1人だけ、術後20年近くを経て透析が必要になったドナーがおられたそうです。
しかし一般的に、私たちが普通に生活するのに2個の腎臓は必要なく、全体の1/4(1個の半分)あれば十分といわれています。したがって2 個とも十分な機能をもっていることが証明された患者さんの場合、残り1個の腎臓のはたらきで、問題が起きることはまれです。
もちろん手術の前には、腎提供手術後も一側の腎臓のみで満足できる生活が今後送れることを十分検査し確認します。

腎移植について」への2件のフィードバック

  1. こんにちは。
    臓器移植について調べていてこちらのサイトを拝見致しました。
    肝臓移植や腎臓移植など、わからないことが多く不安に思う方々がいると思います。
    そんな方々に少しでも情報提供をできればと日々、勉強と努力をしています。
    貴サイトにありました情報や意見は大変参考になりました。
    ありがとうございました。

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