SLEと妊娠の関係

妊娠と出産は女性にとって、人生の中でもっとも大切なできごとの一つでしょう。
もちろん、これだけがすべてではないこというまでもありませんが、女性と男性の決定的な違いは妊娠能力の有無です。
女性がSLEになりやすい時期は、ちょうど妊娠能力を獲得したときなのです。

SLEと妊娠との関係は二つに分けて考えるべきであろうと思います。
一つはSLEが妊娠、分娩に与える影響です。
もう一つは、逆に妊娠、分娩がSLEの臨床経過に与える影響です。
まずSLEが妊娠と分娩に与える影響から先に述べることにしましょう。

SLEの患者さんの妊娠能力は、SLEが寛解(よくなっている状態)のときに限って、健康人と比較して決して劣ってはいません。
しかし妊娠を無事に継続させて分娩まで行く点になると、話は異なります。
SLEの患者さんの方が、流産あるいは早産の比率が高いのは残念ながら事実です。
まず何よりも、SLE自体が完全に治療によってコントロールされている必要があります。
これに関連して言えることがもう一つあります。
それは母親が血清中に坑SS-A坑体をもっている場合のことです。
この坑SS-A抗体というのは、自分のからだの構成成分に対する抗体、すなわち自己抗体の一つです。
この抗体はSLEの患者さんに出現することが多いのですが、この抗体をもっている母親から生まれてくる赤ちゃんには心臓の病気が出る可能性があります。
この抗体が赤ちゃんの心臓に悪さをするのです。
また、坑リン脂質抗体症候群をもっていますと、この影響で血液が凝固しやすくなり、自然流産・習慣性流産になりやすい傾向があります。この場合には、予防的に薬が投与されたり、最近では血漿交換法が開発され、用いられるようになりました。ですから、SLEの患者さんが妊娠を希望する場合は、このような点についてもあらかじめ検査をしておく必要があります。

次に分娩が無事に行われるためには、大量の女性ホルモンが分泌されることが必要です。
SLEの患者さんには女性ホルモンが出過ぎることはよくないのですので、妊娠を契機にSLEが発症することもあります。
また妊娠を継続しているうちにSLEが再燃してくることもあります。

さらに分娩が終わってからSLEが悪くなるという場合もあるのです。
またSLEの治療のために服用している薬剤も、赤ちゃんに悪影響を及ぼす可能性もなきにしもあらずのこともあります。
SLEにより妊娠が許可できない場合は、まだSLEの治療が十分でなく、いわゆる寛解の状態に入っていない場合、あるいはまだステロイド剤の服用が多く、維持量に達していない場合、心臓や腎臓にSLEによる病変がある場合などです。
この場合は、妊娠することによってSLEが再燃する可能性が高いのです。

しかしいつでも、SLEの患者さんが妊娠を許可されないわけではありません。
たとえば、SLEと診断されていても、完全にSLEが治療によりコントロールされており、しかもステロイド剤による維持量が少ない場合、しかもお子さんがなく、どうしても妊娠を希望する場合などは、主治医による十分な監視下で妊娠を許可することもあります。

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